ハンギョレ新聞は、韓国の自主的なメディアである。ジャーナリズム精神にあふれた記者たちが、全方面にわたって問題意識をもって記事を書いている。日本にはないメディアである。
中東情勢、アメリカとイスラエルによるイラン戦争についても、的確な情報を提供している。
残念ながら、日本のテレビはメディアとしてはまったく失格。新聞も、書いている記者たちが、政府官僚と同じ価値観を持っている者が多いので、信用出来ない。
ハンギョレ新聞は、日本語のサイトもあるので、とても便利である。
歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。
アメリカの国際法学者が声明を出した。以下翻訳したものを示す。
私たち、米国を拠点とする国際法の専門家、大学教授、実務家らは、現在の中東における武力紛争において、米国、イスラエル、イランによる国際法の重大な違反および憂慮すべき言動に対し、深い懸念を表明するために本書簡を執筆しました。
我々は米国との関わりがあるため、ここでは米国政府の行動に焦点を当てますが、イラン政府による反体制派への暴力的な弾圧を通じてイラン国民に、また人口密集地域における爆発性兵器を用いた民間インフラへの違法な攻撃を通じて中東全域の民間人に、イラン政府が引き続きもたらしているリスクを含め、同地域全体における残虐行為の危険性について懸念を抱き続けています。
米国とイスラエルがイラン全土に対して攻撃を開始してから1ヶ月が経過した。この作戦の開始は国連憲章への明白な違反であり、それ以降の米軍の行動や政府高官による発言は、戦争犯罪の可能性を含め、国際人権法および国際人道法への違反について深刻な懸念を抱かせるものである。
我々は、自らを世界のリーダーと称する国々を含め、すべての人に対して国際法が平等に適用されることの重要性を共同で確認する。軍事行動を規律するルールを「愚か」と表現し、「合法性」よりも「殺傷力」を優先すると述べた米国政府高官による最近の発言は、極めて憂慮すべきものであり、危険である。
1. 戦争開始の正当性に関する懸念:2026年2月28日に米国とイスラエルが実施した空爆は、武力行使を禁じる国連憲章に明らかに違反している。他国に対する武力行使は、現実的または差し迫った武力攻撃に対する自衛の場合、あるいは国連安全保障理事会によって承認された場合にのみ許容される。安全保障理事会は今回の攻撃を承認していない。イランはイスラエルや米国を攻撃していない。トランプ政権がこれとは反対の、多岐にわたり時に矛盾する主張を展開しているにもかかわらず、イランが自衛権の主張を正当化できる差し迫った脅威を呈していたという証拠は存在しない。米国国際法学会の現会長および次期会長、ならびに国際法協会米国支部の会長を含む多くの国際法専門家は、イスラエルと米国の行動が国連憲章に違反すると結論付けている。また、アントニオ・グテーレス国連事務総長も、この攻撃が国際の平和と安全を損なうものであるとして非難した。
2. 国際人道法の違反に関する懸念:武力紛争法は、現在進行中の紛争のすべての当事者の戦闘行為を規制するものである。我々は、民間人に対する攻撃や、軍事的な役割を担っていない政治指導者、サウス・パースを含む石油・ガスインフラ、海水淡水化プラントなどの民間施設に対する攻撃が報告されていることを含め、これらの基本的な規則が違反された可能性があることを懸念している。3月19日、国連人権高等弁務官フォルカー・テュルク氏は、エネルギーインフラへの攻撃を非難し、それが民間人に与える「壊滅的な」影響に言及した。
我々は、学校、医療施設、住宅を標的とした攻撃について深刻な懸念を抱いている。イラン赤新月社は、「67,414カ所の民間施設が攻撃を受け、そのうち498カ所が学校、236カ所が医療施設である」と報告している。主要な市民社会団体による報告書によると、2月28日から3月23日の間に、米国およびイスラエル軍による攻撃で、少なくとも1,443人のイラン人民間人(うち217人は子供)が死亡したことが判明した。
ミナブ小学校への攻撃は、特に懸念される事態である。2月28日、イランのミナブにあるシャジャレ・タイエベ小学校が空爆を受け、イラン当局によると、少なくとも175人が死亡し、その多くは子供だった。容易に入手できるオンライン情報や市販の衛星画像によると、この建物は10年間にわたり学校として使用されていたようだ。トランプ大統領は米国の関与を否定し、「イランによる犯行だ」と虚偽の主張を行った。しかし、国防総省による予備調査では、攻撃を実施したのは米国であり、標的選定は古い情報に基づいていたと結論づけられたと報じられている。この攻撃は国際人道法に違反している可能性が高く、責任者が無謀であったという証拠が見つかれば、戦争犯罪にもなり得る。この攻撃は、ここ数十年における米軍による民間人への単一の攻撃としては、最も多くの犠牲者を出したもののひとつである。
3. 高官による過激な発言や脅迫への懸念。我々は、戦争中に政府高官が行った以下のような危険な発言について、深く懸念している。
a. 容赦しないとの脅迫:3月13日、ピート・ヘグセット国防長官は、「我々は攻め続け、前進し続ける。敵に対しては容赦も慈悲もない」と述べた。国際法において、「捕虜を認めない」と宣言することは「特に禁じられている」ものであり、この禁止事項は国防総省自身の戦争法マニュアルにも明記されている。ヘグセット氏の発言は、国際人道法および米国戦争犯罪法(18 U.S.C. 2441)に違反している可能性が高い。容赦しないよう命令したり脅したりすることは戦争犯罪である。
b. 交戦規則および国際法の無視:ヘグセット国防長官の「容赦しない」という発言は、同長官による同様の憂慮すべき発言に続くものである。これには、2025年9月25日および2026年3月2日の「米国は『馬鹿げた交戦規則』に従って戦わない」という発言も含まれる。2026年1月8日、トランプ大統領は「国際法など必要ない」という不穏な発言を行った。3月13日には、米国が「単なる気まぐれで」イランへの空爆を行う可能性があると述べた。
c. エネルギーインフラへの脅威:トランプ大統領は2026年3月13日、次のように脅した。「1時間以内に、電力を供給し、水を供給する発電所などを破壊することもできる……我々は、文字通りその国が二度と再建できないほど甚大な被害をもたらすような行動をとることができる。」 国際法は、民間人の生存に不可欠な対象を攻撃から保護しており、トランプ氏が脅した攻撃が実行されれば、戦争犯罪に該当する可能性がある。3月21日、トランプ大統領はさらにイランの発電所を「壊滅させる」と脅した。翌日、マイク・ウォルツ米国国連大使は発電所への攻撃を擁護し、原子力発電所への攻撃も選択肢から外れていないと述べた。民間エネルギーインフラへの攻撃は禁止されている。発電所が民間と軍事の両方の目的(「デュアルユース」)を有する場合、それが「軍事行動に実質的な寄与」をし、かつ攻撃が「明確な軍事的利益をもたらす」場合には、軍事目標とみなされる可能性がある。ただし、いかなる攻撃も、比例性の原則および攻撃時の予防措置の原則を遵守しなければならない。比例性の原則は、軍事的利益に比して過度となるような付随的な民間人被害を引き起こすと予想される攻撃を禁じている。考慮すべき民間人被害には、予見可能な波及的または間接的な被害も含まれる。いかなる攻撃においても、民間人被害を回避するために「実行可能なあらゆる予防措置」を講じなければならない。
原子力発電所への攻撃は、たとえ軍事的な目的があったとしても、放射線や放射性物質が放出されるリスクが高く、その結果として民間人に甚大な被害が及ぶ可能性があるため、特に慎重な対応が求められる。そのような攻撃は、何百万人もの民間人の健康と安全を脅かす恐れがある。 2026年3月23日、国際赤十字委員会(ICRC)のミルジャナ・スポリヤリッチ・エガー会長は、「重要インフラへの攻撃は民間人への攻撃である」と指摘し、原子力発電所に対する脅威を「最も憂慮すべき事態」と表現し、深い懸念を表明した。
4. さらなる違反を防ぐための制度的保障に対する懸念:トランプ政権第2期が始まって以来、ヘグセット国防長官率いる国防総省は、国際人道法の遵守を確保するための保護措置を意図的かつ組織的に弱体化させてきた。これには、不祥事を公に指摘することなく上級軍事法務官を更迭したり、陸軍・海軍・空軍の法務総監を交代させたりすることが含まれており、これらは戦闘作戦に対する法的監督を直接的に損なうものである。また、作戦中の民間人への被害を最小限に抑えるために特別に設けられた「民間人環境チーム」やその他の仕組みも廃止された。2026年版『国家防衛戦略』では、民間人の保護や国際法に関する言及が完全に省かれている。ピート・ヘグセット国防長官が、交戦規則は「勝利のための戦闘」の妨げになると発言していることを踏まえると、こうした変化は特に懸念される。
我々は、ここに概説された行為や脅威が中東の民間人に深刻な被害をもたらしていること、またそれらが紛争の激化、環境や世界経済への悪影響の一因となっていること、さらにはあらゆる国の民間人を保護する法の支配や基本的規範を損なう恐れがあることを深く憂慮している。高官による公の声明は、各国が受け入れ、民間人と軍人の双方を保護する国際人道法の規則に対する、憂慮すべき軽視を示している。
我々は、米国政府当局者に対し、常に国連憲章、国際人道法、および人権法を遵守し、国際法の規範に対する米国のコミットメントと尊重を公に明確にするよう強く求める。
我々は、すべての国家に対し、米国、イスラエル、またはイランによる国際法上違法な行為の実行を援助または助長しないこと、ならびに侵略の禁止や国際人道法の基本原則を含む一般国際法の強行規範(ジュス・コゲン)に対する重大な違反を、合法的な手段を通じて終結させるために協力する法的義務があることを改めて指摘する。
また、我々は、米国政府の同盟国および協力パートナーに対し、ジュネーブ条約の共通第1条および関連する慣習国際法に沿って、国際人道法を尊重し、その尊重を確保するための措置を講じるよう強く求める。米国自身も、国家は他国による国際人道法の遵守を促進するよう努めるべきであると認めている。1949年の第一ジュネーブ条約に関する国際赤十字委員会の2016年解説書は、ある国家が「紛争当事国の軍隊への資金提供、装備供与、武装化、または訓練に関与し、さらには当該軍隊と共同で作戦を計画、実行、および事後検討を行う」場合、その国家は「パートナー国の行動に影響を与える上で独自の立場にある」と規定している。
DeepL.com(無料版)で翻訳しました。
世界の歴史をさかのぼっていくと、世界で最も人を迫害し、殺してきたのはキリスト教徒である。十字軍は言うまでもないことだが、ロシアや中東欧でユダヤ人を迫害したのもキリスト教徒、ナチスドイツもキリスト教徒であった。またヨーロッパから新大陸に渡ってきた移民たち、彼らも多くの先住民を殺害した。そして彼らも、もちろんキリスト教徒であった。
キリスト教徒の中には、絶対平和を希求する派もあることは知っているが、しかし総体として、キリスト教徒がもっとも多くの人間を殺している。
さて現在、国際法を無視して、イスラエルとトランプ政権が、イランに戦争をしかけている。
ハフィントンポストで、こういう記事を見つけた。
「私たちのチームは、少し大きな声で祈りを捧げていました。ドナルド・トランプ大統領とファーストレディはこの聖週間、キリスト教徒たちとともに、私たちの主で、救い主であるイエス・キリストの復活を祝い、祈っています」と伝えた。
ヘグセス国防長官は3月の記者会見で、イラン戦争でのアメリカが勝利するように、ひざまずいてイエスに祈ることを国民に呼びかけた。
ヘグセス氏はこの時、聖書の詩篇の一節を引用し「主が褒め称えられますように。主はわが岩であり、戦争のためにわが手を、闘いのためにわが指を鍛えられる。主はわが慈しみの神、わが砦、わが要塞、わが救い主。わが盾であり、わたしが身を寄せる方である」と述べた。
さらにヘグセス氏は3月25日に国防総省で礼拝を執り行い、「偉大で力強いイエス・キリストの名において、慈悲に値しない者たちにアメリカ軍が圧倒的な暴力を加えるよう」祈った。
イエスキリストは、国際法を無視して戦争をしかけるアメリカ、そしてユダヤ教徒のイスラエルを支持するのか。
もちろん、キリスト教徒の中には、これと正反対のことを宣言する良心的な人びともいる。
教皇レオは、「神は戦争を拒否する」と言明した。この記事である。
「神は戦争起こす指導者の祈りを拒絶」、ローマ教皇が異例の発言
キリスト教徒は、イスラエルやアメリカの蛮行にいかなる態度をとるのであろうか。
アメリカ国民は、イランを「石器時代にする」という大統領の脅迫に賛成なのですか?もし実際に、アメリカが無数の爆弾やミサイル、あるいは地上戦を行い、イランの民衆の命を奪い、インフラや建物を破壊しても、あなたたちアメリカ国民は平気なのですか?
今までもアメリカは、新大陸の先住民であるインディアン殺戮からはじまって、世界各地で多くの人命を奪い、破壊の限りを尽くしてきました。そういうアメリカの歴史、実際に行ってきたことを、悪いことであると思わないのですか?
今、イスラエルとアメリカが一緒にイランを攻撃し、イスラエルはガザだけではなく周辺諸国にも軍事的な活動を展開しています。その結果、多くの人命が奪われ、人びとの住居が破壊され、多くの人がテント生活を余儀なくされています。
イスラエル、アメリカによるイラン攻撃には、一切の正当性はないし、明らかに国際法に違反している。アメリカの大統領は、国際法なんかいらないなどと言っているが、国際社会が平和的な秩序を構築しようとしてきた努力を踏みにじってもよいと、アメリカ国民は考えているのですか?
そして世界のユダヤ人よ、あなたたちの国としてつくりあげられたイスラエルが、ガザでジェノサイドを行い、さらにイランや周辺諸国を攻撃していることに、賛成ですか?少し調べれば、イスラエルが行っていることは、人道に反し、正義を踏みにじり、国際法を無視した蛮行としか言いようがありません。
ナチスドイツに多くのユダヤ人が虐殺されたことに世界の良心的な人びとは悲しみ、同情してきました。
しかし今、ユダヤ人国家であるイスラエルは、ナチスドイツが行ってきたことと同様なことをやってます。 あなたたちは、それを認めるのですか?
アメリカ国民よ、世界のユダヤ人よ、アメリカとイスラエルの無法行為をやめさせるようにしてください!
イランを「石器時代にする」という野蛮な言動をやめさせなさい!
Do the American people support the president’s threat to “send Iran back to the Stone Age”? Even if the U.S. were to actually launch countless bombs and missiles or launch a ground invasion, taking the lives of the Iranian people and destroying their infrastructure and buildings, would you, the American people, really be okay with that?
From the very beginning—starting with the massacre of the Native Americans, the indigenous peoples of the New World—the United States has taken countless lives and wreaked havoc across the globe. Don’t you consider this history of the United States, and the actual actions it has taken, to be wrong?
Currently, Israel and the United States are attacking Iran together, and Israel is conducting military operations not only in Gaza but also in neighboring countries. As a result, many lives have been lost, people’s homes have been destroyed, and many are forced to live in tents.
There is absolutely no justification for the attacks on Iran by Israel and the United States, and they clearly violate international law. The U.S. president says things like “we don’t need international law,” but do the American people really believe it is acceptable to trample on the international community’s efforts to build a peaceful order?
And to the Jews of the world: Do you approve of Israel—the nation established for you—committing genocide in Gaza and attacking Iran and its neighboring countries? A little research will show that what Israel is doing can only be described as barbaric acts that violate humanity, trample on justice, and disregard international law.
People of conscience around the world have long grieved and sympathized with the Jewish people over the mass murder of so many Jews by Nazi Germany.
However, today, the Jewish state of Israel is doing exactly what Nazi Germany did. Do you condone this?
People of the United States, Jews of the world, please put a stop to the lawless acts of the United States and Israel!
Put an end to the barbaric rhetoric about “sending Iran back to the Stone Age”!
やっと図録が届いた。ショッキングな赤と黒の表紙、そこに黒字で「中村宏 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」という文字が浮かび上がる。
展覧会で見つめた作品が並ぶ。実際の絵画に、観る者は圧倒される。中村の絵にはエネルギーが渦巻いている。中村は、「絵画は光を観ること」だといっているが、その光とはエネルギーそのものだ。中村のエネルギーが、観る者に飛びついてくる。
静岡県立美術館には9時頃着いた。それから3時間以上、中村の作品を見つめ続けた。疲れた。
わたしは、中村の作品に「左翼」をみる。彼は、若い頃砂川闘争などに参加した。「左翼」の運動に関わる者たちは、想像できないほどのエネルギーを潜在的に持つ。しかし、「左翼」は、自分のためにそのエネルギーを費消するのではなく、自分以外のものに費消する。砂川闘争のような街頭行動だけではない。いつも、何に費消するのか、みずからのもつエネルギーを何に投入するのかを考える、さがす。同時に、何らかの理念も求める。その理念とは、他者と何らかのつながりをもつものである。社会性といってもよいだろう。
中村は、もちろん絵画に投入する。何を描くか、他人にはないようなエネルギーを、セーラー服姿に、機関車に、あらゆる造形の中に投じる。投じるしか、生きようがない、描きようがないのである。しかし、そこに必ず理念的な社会性が込められているように思える。最初の絵から、最後の絵まで。
だから、生涯、彼は「左翼」であり続けたと思う。
しばらく浜松から離れていたことため、ブログの書き込みはできませんでした。
先月、「中村宏展 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」という展覧会を観にいき、図録を予約してきたところ、4月上旬に発送とのこと。
図録が欲しいけど、予約販売が締め切られたということから諦めていた方がいるが、今日、静岡県立美術館にアクセスしたら、以下のような記述があった。
中村宏は、注目されるべき、浜松市出身の画家で、最近亡くなられたばかりである。
皆様からのご要望を受けまして、以下のとおり図録の追加販売を決定いたしました。
<販売開始日>
令和8年4月14日(火) ※事前予約はできません。
<価格>
4,000円(税込み)
<購入方法>
上記販売開始日から以下の方法で購入・予約いただけます。
・当館ショップでの現地購入
・当館ショップへの電話予約(054-262-1960)
※電話予約の場合、図録代金と送料は現金書留でのお支払いとなります。
昨日、著者である田中さんからご恵贈いただいた本である。3月27日刊行とあるから、もうじき店頭に並ぶことであろう。
昨日届いたばかりであるから、もちろん読み終えていない。したがって、ここでは途中経過の段階で記すものである。
わたしは、この大杉栄や伊藤野枝、橘宗一に対する、甘粕ら陸軍憲兵隊による惨殺事件についてはよく知っている者だろうと自分でも思っているが、しかし、橘宗一少年、その母あやめらの動向を詳しく知っているわけではない。この本を読みながら、まず思ったことは、この事件はあまりに悲しい事態であると言うことを再度痛感したことである。大杉や野枝の惨殺もむごたらしいものであるが、いたいけな宗一少年の命が奪われたことの重さ、悲しみを、この本を読みながら感じるのだった。
そしてもうひとつ、彼らを、無法に虐殺した甘粕正彦ら陸軍憲兵隊は、まさに鬼畜というべき所業であること、さらに軍事裁判で彼らの罪が問われることなく終わったこと、そして何と彼ら犯罪者に対して、減刑嘆願運動が行われたという事実。これらは、近代天皇制国家の本質を象徴する。その本質は、陸軍という軍事組織、それに付属する憲兵隊、さらに減刑嘆願運動を行った庶民に表現されている。
最近行われた選挙のなかであらわれた、日本の庶民が、統一教会や裏金問題など政権政党の闇をなんら問題にせずに投票行動を行ったその正義に悖る反倫理的な行為に、甘粕らの減刑嘆願運動を重ねてみる。近代日本から今日まで、日本の庶民には、正義や倫理はないのではないか、と思うほどである。
まだ読み終えていないが、読み進む中で、今迄大杉や野枝の本をいろいろ読んでは来たが、あらたな事実、新たな感慨が生じてくるのであった。そしてその感慨は、現代の日本の現状からわきあがることでもあった。
田中さんは、巻頭に、韓国のノーベル賞作家、ハンガンの「歴史的事件を扱うことは、過去について語る方法を探し出し、現在について語るということです。歴史を見つめて問うことは、人間の本性について問うことでもある」を引いている。それは、本書で具現している。
多くの方に読んでもらいたい。この本、悪税抜きで2000円である。すべて読み終えたら、また書くであろう。