2025年10月7日火曜日

右へ、右へ

  右へ、右へ・・・というのは、世界的傾向である。どの国でも、新自由主義的な施策を展開してきて、その結果、庶民の生活が苦しくなる一方で、富裕層の財産が大幅に増えている。こうなると、ふつうに考えられる政策は、富裕層に課税して、所得の平等を図るということになるのだろうが、そうはならない。富裕層が政治家と結託してみずからに有利になるような施策を行わせているからである。

 では庶民は?というと、庶民はほとんど政治のことには関心なく、日々の生活を営むことに精一杯。しかし、自分たちの生活が困難になっていることは肌で感じている。そんなとき、その原因を深く追究するのではなく、身近なところにその原因を見出し、それを攻撃するようになる。

 『地平』11月号は、なかなかよい特集記事を載せている。「左派は復活できるか」という特集で、英、米、独、仏四カ国の現状を報告していて参考になる。日本で起きていることは、同時にそうした国々でも起きていることがわかる。

 新自由主義的な施策で、アメリカでは、富裕層上位1割が、富全体の7割近くを保有、下位半数が保有する富はわずか3%。ドイツでも、10%の最富裕層が総資産の67.3%を占有、フランスでは、2003年から2023年までに、超富裕層500人の財産は9・4倍に増え、貧困層は人口の16%となっているという。

 こういう格差拡大のなか、何をなすべきかは財産税などで富裕層に課税することが考えられるが、そういう政策はしない。労働者の利益を代表する政党は、どこの国でもあるが、そのような政党が新自由主義的な政策をためらいもなく続けることによって、そうした政党に期待をかけていた庶民が支持しなくなる。

 アメリカの民主党、イギリスの労働党、フランスの社会民主党など、庶民にそっぽを向かれている。日本の立憲民主党も同様である。これらの政党は庶民の苦しさを改善しようという気持ちなどさらさらない。したがって、既成政党には、期待できないという状況がある。そのなかで、極右政党が台頭し、デマや虚偽を流布することによって庶民の支持を得て、彼らに権力を渡す。その結果、庶民の生活はより悪化するのだが、庶民はそんなことに気づかない。外国人が・・・・などと、悪化の原因を身近な存在に求めるのだ。結果、たとえば、トランプは、大統領という立場を利用して巨額の利益を得る。

 テレビメディアを先頭に大手メディアも支配層と結託し、またSNSでは極右政党が無責任なデマを流す。庶民は、考える材料を与えられない。もちろん、みずから手に入れようと、たとえばこの『地平』などを読めばよいのだが、そんなことはしない。庶民は忙しいのである。

 こういう厳しい状況の中で、どこの国でも少数派の「左派」が頑張っている。イギリスのコービンらによる新党、ドイツの左翼党、フランスの「新人民戦線」。日本では、わたしがみるところ、「れいわ新選組」がとにかく頑張っている。

 庶民全部が「右へ、右へ」というわけではないだろうが、政治家諸君は総じて「右へ」と進んでいる。自由民主党なんかは、ほぼネット右翼と同一化したようだ。大企業労働組合に組織されている連合の労働者も、連合会長と共に「右へ」と歩む。参政党や維新は自由民主党とあまり変わらない。立憲民主党は、地位名誉財産をもとめて議員になりたいという人物によって構成されている。「世のため、人のため」に政治家を志す者はほとんどいない状態だ。そのなかで「れいわ新選組」だけが、その先頭に立とうとしている。しかし日本の「左派」はきわめてマイノリティとなっている。それを挽回する手だては、今も見つかっていないように思える。

 

  

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